先日の4月26日の「サンデープロジェクト」というテレビ番組で、こんな問題が取り上げられていた。
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それは、2005年に日米犯罪人引渡条約に基づいて、アメリカに引き渡された日本人女性の悲劇についての問題提起。
「自国民の生命、自由を守るのが存在意義であるはずの政府。日本の司法は、いったい誰のため、何のために存在しているのか。徹底検証する。」という、この番組の説明によれば、経緯は概ね次のとおり。
この女性は、新たなビジネスを始めるためマンハッタンの事務所で活動をしていたところ、9.11テロによってその事務所が罹災した。その後、被災者向けの低利ローンの制度があることを知り、ローンの申請手続をとった。だが、役所からの連絡で、手続を依頼していた弁護士が勝手に100万ドルものローン申請をしていたことがわかり、即座に申請を取り下げた。
ところが、アメリカの検察がこれを罹災の事実のない虚偽申請だとして起訴し、この女性の身柄引き渡しを日本に求めるに至った。そして、「日本の法務省、検察庁、そして東京高裁は、アメリカ政府の言い分を検証しようとももせず」安易に引渡を認めてしまった。
アメリカに引き渡された女性は無実を訴えたが、現地の弁護士もこれを相手にせず、有罪答弁をして司法取引に応じるよう、彼女を説得するばかりだったという。そこで、その弁護士を解任したが、2人目も同様だったため解任した。
しかし、3人目の弁護士も同じことを言う。弁護士たちが言うには、外国人がテロに便乗して詐欺行為をしたという起訴事実については、アメリカ人の反感が強く、陪審で無罪を勝ち取るのは無理だとのこと。そのうち、勝手に高額申請をやっていた弁護士が、司法取引に応じて、その女性との共謀を認める供述をするに至った。結局、たとえ申請を取り下げていても、共謀していただけで共謀罪に問われるのだと説得され、その女性本人もあきらめざるを得なくなり、有罪答弁をして服役することになった。
検察側の唯一の証拠は、その女性が事業のために出入りしていたマンハッタンの事務所のビル管理人の証言。実際、番組のスタッフがその管理人に電話をかけて話を聞いていたが、確かに管理人は、その女性が9.11以前に事務所に出入りしていた事実はないと主張している。
しかし、「我々はアメリカで関係者の取材を試みた。すると、無実を訴える彼女の主張を裏付ける事実が次々と明らかとなった。」とのこと。
番組が入手した「一本のビデオテープ」には、9.11テロが起きて間もなく、その女性が事務所のビルに入って行く姿や、相談窓口で、ローン申請について説明を受ける彼女の姿が映っていた。
しかも、彼女の無実を示す決定的証拠があったという。それは、その女性自らが、申請を取り下げたときの記録。しかし、検察はこの文書には触れようとしなかった・・・。
なるほど、私も、制度のあり方として、日本側の引渡の手続に問題があって、とくに反論の機会が十分でないことについては同じ意見だ。
ただ、このストーリーによると、この女性は完全に無実で、アメリカの検察も3人の弁護士も、日本の法務省も高等裁判所も、彼女の無実を見抜けず、適当な証拠だけで刑務所送りにしてしまったアホということになるが、本当にそうだったのか・・・と、ひねくれ者の私なんかは思ってしまった。
証拠に直接触れたわけではないから、この女性が有罪なのか無実なのか、私には判断できない。ただし、彼女を有罪にしてしまった連中はケシカラヌと、非難できるような根拠が番組で示されたのかというと、ほとんど示されなかったと私は思う。少なくとも、この番組で提供された情報だけでは、この番組の主張には同意できない。
というわけで今回は、司法関係者の怠慢や事務所管理人の偽証に対し、この番組が下した「有罪」判定に対して、彼らの「冤罪」をここで訴えたいと思う。
まず、番組を観ていて、疑問に思った点がいくつかあった。
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